シャトレーゼの海外戦略:日本で培った逆転の発想で東南アジアで躍進

シャトレーゼという会社を知っていますか? 

東南アジアで急速に店舗数を増やしているケーキ屋です。日本直輸入の美味しくて手頃な値段の、洗練された生菓子で人気を集めています。

今回は大手にできない逆転の発想で東南アジアで躍進する、山梨県甲府市に本社を置くの生菓子メーカー「シャトレーゼ」をご紹介します。

私がシャトレーゼの名前を初めて見たのは、ジャカルタ中心にある高級モール『スナヤン・シティ』です。「日本のお菓子屋さんがもうすぐ来ます」とシャッターに書かれているのをみて、甘さ控えめのケーキが少ないジャカルタにして、楽しみに待っていました。そして開店した店が、Chateraise (シャトレーゼ)でした。 

日本直輸入と書かれていて、ショーケースに沢山の種類のケーキが並んでいました。シュークリームやストロベリーショートケーキなどがとても美味しくとても嬉しかったのを覚えています。現地の方々にもとても人気があり、次々と他の高級モールにも店舗が増えていきました。

でも、日本で見たことがないお店です。調べてみると、日本の都市部には店舗がないことがわかりました。どうりで見たことがない訳です。山梨の工場で作ったケーキを直営店に届けて、更に海外にも直送することで、安く美味しいケーキを販売しているお店でした。

今回は、この山梨のケーキ屋が世界に進出して成功している例をみていきましょう。

 

シャトレーゼの成長

沿革:大手ができないことをやる(逆転の発想)


シャトレーゼホールディングスの創業は1954年です。今川焼き風のお菓子「甘太郎」の店舗を山梨県甲府市に出店しました。温かい作り立ての甘太郎は、夏になると売れ行きが落ちるため、夏にも売れるアイスクリームの事業を開始しました。しかし、全国に販売ネットワークがある大手メーカーと競うことができず、それならば「大手ができないこと」と考えた結果が、生菓子の製造でした。大手メーカーは計画生産のため、痛みやすい生菓子の製造はしていませんでした。

1967年に、低コストで衛生的なシュークリーム製造に乗り出し、社名をシャトレーゼに変更しました。アイスクリームで培った生産技術で、安価で売り出し、1日50万個売れる大ヒット商品となりました。

1985年に工場直売店を甲府市にオープンし、連日行列のできる店となりました。そして1986年に千葉県に工場直売店のフランチャイズ1号店をオープンし、これを皮切りに全国から出店申し込みが相次ぎ、郊外型フランチャイズ店として全国展開がすすみました。

そして1994年には白州工場を稼働、契約農場から素材の調達、自社工場で生産、全国の直売店に専用便で配達、販売まで一環して行う「ファーム・ファクトリー」という独自のサプライチェーンを築きました。

生菓子は日持ちしないため、店で作って売ることが一般的ですので、生菓子を大量生産するというシャトレーゼの仕組みは大手にも、小売店もできない、極めて稀なケースです。

創業以来、「おいしいものを、お値打ち価格で」をモットーに、店舗数は国内で556店舗で菓子の製造小売としては国内最大級の菓子メーカーとなりました。(2021年1月現在)

海外進出:テストマーケティングを実施


シャトレーゼの快進撃も、2010年代前半には日本市場での成長にブレーキがかかりました。これは日本の少子高齢化が原因で、今後の成長戦略として海外展開を開始する必要性がでました。

シャトレーゼは、海外進出においても、日本で成功した逆転の発想で事業展開をしていきました。

日本の食品は各国共に評価が高く、日本のパティシエも進出していますが、特に暑い東南アジアでは牛乳や卵、生クリームなど良質な原料が手に入りにくく、加えて手作りの為、価格を高くせざるを得ない状況でした。

この状況下、日本で成功した逆転の発想が海外でも通じるチャンスと考え、日本で生産したシャトレーゼの商品を瞬間冷凍して輸出し、現地で解凍・販売するシンプルな方法を考案したのです。2014年秋にシンガポールでテストマーケティングを1週間行ったところ、想像以上の客が訪れました。そして2015年4月にシンガポールに海外1号店をオープン。これを皮切りに台湾、マレーシア、中国、UAE、香港、タイ、インドネシア、ベトナムに進出し、6年間で海外8か国に90店舗を展開しています。

現地での生産も増やしていく方針で、インドネシアの工場完成に続き、ベトナムにも建設する計画となっています。

海外では、日本の郊外型ではなく、市内の百貨店やショッピングモールに展開し、日本品質の美味しいお菓子をリーズナブルに提供することで、東南アジアの中産階級に大人気となっています。

成功の鍵


「儲けようと思うと儲からないんです。儲けようと思わないでお客さまが喜ぶことをしてシャトレーゼのファンを作れたら儲かるんです。いかに“強烈なファン”を作るかが我々の仕事なんです。」 (齊藤シャトレーゼ会長)

シャトレーゼが創業以来こだわっているのは、「圧倒的な安さ」。これを可能にしたのには、ファームファクトリーです。日本では郊外型の出店によるコストを控えることで安さを維持してきましたが、海外では小さな店舗でショッピングモールに出店することで初期投資を低くおさえています。海外の価格は、海外へ輸出しているにもかかわらず日本の価格とほぼ同額に抑えています。空輸した上で、海外で同額で売るということは実際には難しく、それを実現できるシャトレーゼの体質は高い評価を受けています。

そして添加物を極力使わず、品質管理を厳しく行い、契約農家より新鮮な牛乳、卵、小豆、フルーツなどを直接仕入れ、オートメーション化による衛生的な製造で、素材にこだわった日本の品質「安全な美味しいお菓子」を売ることで差別化を図っています。

“強烈なファン”を獲得するための取り組みは、宣伝戦略にも現れています。「商品がよければ広告はいらない」と創業以来重視してきたのは「口コミ」で、テレビCMなどの宣伝はほとんど行っていません。

力を入れているのはSNSで、ツイッターでスイーツの写真をつけて商品の投稿をほぼ毎日行っています。その結果、日本での公式アカウントのフォロワー数は35万。明治やブルボンといった大手菓子メーカーを10万フォロワーも上回っています。

このSNSによる口コミは、SNSを多用する東南アジアでも、大変効果的です。シンガポールで大人気になったシャトレーゼをSNSでみた東南アジアの各国からフランチャイズの申し込みが沢山舞い混んだことで急激に東南アジアに展開していきました。

「われわれがやってきたことをそのまま海外でやれば、現地の人に非常に喜んでもらえると思っている。ハイイメージでしかもローコストでやっていく。シャトレーゼの今の戦略を海外で試すちょうどいいタイミングで、『世界のシャトレーゼ』になるような形で推し進めていきたい」(齊藤シャトレーゼ会長)

\\うちの商品、あの国で売れるの??//
世界の秀才が手伝う海外市場調査|株式会社PILOT-JAPAN

 

まとめ-シャトレーゼのテストマーケティング

海外に進出する際に、日本で成功した逆転の発想で築いた商習慣をそのまま海外に持ち込んで成功しているのがシャトレーゼです。これはもちろん日本の味と品質が海外でもそのまま通じるという自信があってのことです。これは本格的進出の前にテストマーケティングをしたことで実感したものです。

日本で競争相手のいないユニークな戦略で急成長した会社、そのまま同じく競争相手ない海外で、その戦略を変えることなく、「メイドイン・ジャパン」の味と品質を信じた商品を日本と同じ低価格で売り出すという大変ユニークな海外進出の成功例です。 

\\\グローバルモビリティとは?///
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【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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