博多一幸舎と丸亀製麺の成功例から学ぶ:海外進出のための市場調査

海外で新たに事業を展開したい、規模拡大したいなど、海外進出・事業拡大を検討するとき、進出先の市場環境、消費者のニーズ、競合相手の分析、販売チャネル、法規制、商慣習などの関連情報の収集は不可欠です。

 

日本で成功した製品・サービスが海外で受け入れられるとは限りません。各国の規格・規制に準じた製品・サービスを提供することはもちろんのこと、進出先の生活習慣や嗜好にマッチした製品・サービスの展開が重要です。このため、目まぐるしく変化するユーザーニーズや競合企業の状況、各国の方針・法規制の変化といったビジネスチャンス・リスクをいち早くキャッチし、迅速に対応することが必要です。また、製品・サービスをユーザーに効率的且つ安定的に提供できるチャネル構築なども必要となります。

 

それでは、どのように現地の消費者ニーズを掴むことができるのでしょうか?

 

今回はインドネシアで群を抜いて成功したレストランの事例から、海外進出のヒントをみてみたいと思います。

 

 

博多一幸舎のインドネシア進出

 

インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱える国です。ご存知の通り、イスラム教では豚は不純のものとして食べることを禁じています。そのため豚肉を多く使う中華料理であっても鶏肉で代用することが多く、以前は豚肉を使うレストランはインドネシアに進出していませんでした。

 

しかし、華僑の人達は豚肉を食べることが好きですので、中華系人口の多い地域では豚料理を食べることができました。中華系はインドネシアの人口の3%を占めています。3%といっても、2億5000万人の人口をもつインドネシアですから、750万人と世界一の中華系人口がいることで知られています。

 

「3%の華僑系がインドネシア経済の90%を牛耳る」といわれるほど、ビジネスにおける華僑系の存在感は大きく、有名な財閥が多く、首都ジャカルタにはとりわけ多くの中華系の人々が暮らしています。

 

 

豚骨ラーメンの市場を開拓した先駆者


豚骨ラーメンがジャカルタで食べられるようになったのは、2003年にラーメン38という日本人が手がけるラーメン屋が最初です。中華系の私の上司が豚骨ラーメンを食べにきていて、よく会ったことを覚えています。

 

豚骨ラーメンの博多一幸舎は、2011年にジャカルタ北部の中華系住民が多い地域にオープンしました。店は連日大繁盛し、店舗を構える通りに路駐する車が渋滞を引き起こすまでになり、 そして瞬く間に豚骨ラーメン人気に火がつき、ジャカルタ北部にものすごい数のラーメン屋ができました。

 

しばらくするとジャカルタ中央部のモールにもラーメン屋がオープンするようになりました。今では、一風堂、田ぶし、鶴亀堂、麺王、越後屋、ばり馬、麺屋桜、ばんからなどなど、数多くの日本のラーメン屋が出店しています。

 

最近では、中華系だけでなくより多くの人にラーメンを食べてもらうため、鶏ベースのラーメン屋『清六屋』なども出店していますし、地域によって一幸舎も鶏を使うことで出店数を増やしています。また、油そばの山ト天など、幅広い日本のラーメンチェーン店が進出して成功しています。

 

現地のパートナーによる立地選択が成功の鍵


博多一幸舎にとっては、ジャカルタが初の海外進出でした。オーナーの高校時代の友人がインドネシアで仕事をしていて、その方からフランチャイズで展開するという申し出があり出店を決めたということです。やはり現地をよく知る人がパートナーにいるということは海外進出には大切だとわかる例です。食べ物に関しては、味が現地の嗜好にあっているかが大切ですし、店の立地、法や慣習も大切ですので、現地パートナーの力を借りることがとても大切です。

 

他のラーメン屋の出店理由も、インドネシア人が日本にきた時に話を持ちかけてきて出店を決めた、というものが多かったと記憶しています。

 

インドネシアで豚骨ラーメンの火付け役をした一幸舎ですが、その後ローカル資本にスタッフを引き抜かれ、味も店作りもそのままコピーしたと言われている一喰堂がオープンしました。名前も「一幸舎」と「一風堂」を合わせたような名前で、場所もなんと一幸舎から道を隔てたところにありました。食べてみると結構本格的で、値段は少し安かったため、地元の方には人気の店となりました。

 

当時は情報漏洩を心配した一幸舎の対策として、秘密保持契約書にサインをしないと食べれないということもあったことを記憶しています。ノウハウを学んだインドネシア資本がアレンジをして成功している例は、ほかほか弁当とCrispy Creamを真似したJ-coなど色々あります。

 

進出を成功させるためには、パートナー選びと同時に、現地資本のコピーに対する対策が必要だとわかる事例です。

 

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丸亀製麺のインドネシア進出

 

日本のトリドールが経営している讃岐釜揚げうどんの丸亀製麺は海外進出に積極的で、2011年にハワイにオープンして以降、海外展開を急速に進めています。

 

2013年3月には、現地企業とフランチャイズ契約を提携してインドネシア進出を果たしました。パートナーの現地会社は、Sribogaという小麦の製粉会社で、既にPizza Hutで全国で200店舗のフランチャイズを展開をするノーハウを持つ会社です。

 

丸亀製麺は、今ではインドネシア全34州の約半分に72店舗を展開する超大人気店となっています。店名は「MARUGAME UDON」。「うどんを一般的な食事として認知させたい」という思いから、「UDON」の文字を入れたと言われています。

 

丸亀製麺のインドネシアでの成功は、製粉会社として原材料を供給でき、更に全国展開を経験したことのある会社をパートナーに選んだことが大きいと考えられます。Pizza Hutとの契約を長い間続けているということで、この会社は信頼のできるパートナーであり、他のケースにあるようにノーハウを学んでそのまま契約解消をしてしまうようなリスクは少ないと考えられます。

 

丸亀製麺は市場調査を行い、そして現地パートナーの知見をよく取り入れ、様々な工夫をして成功しました。

 

 

商品開発:パートナーの知見を生かす


丸亀製麺では、商品開発は基本的にインドネシア人に委ねているそうです。

 

インドネシアのオリジナルメニューとして、イスラム教徒向け「鶏白湯(とりぱいたん)うどん」を開発しています。日本で使っている一般的な調味料は豚由来の調味料が入っていてイスラム文化圏では使えないため、店ごとに鶏ガラスープを作っています。

 

「釜揚げうどん」や「かけうどん」といった定番商品も、味は現地の好みになるよう工夫しています。日本の場合もっちりとしたコシのある麺が好まれますが、インドネシアでは比較的喉ごしの良さを好む傾向があるため、麺は軟らかく細めにして、うどんの長さは45センチと日本の60センチより短くしています。

 

日本では葱、生姜、天かすなどを取り放題にしていますが、唐辛子が好まれるインドネシアでは刻み唐辛子も置かれています。

 

またインドネシア人は揚げ物が好きなので揚げ物を充実させています。日本でもお馴染みの海老天やかき揚げなどに加え、半熟卵の天ぷらやノリの天ぷらにマヨネーズやチリで味付けしたオリジナルメニューを用意しています。店を訪れると、日本と比べて揚げ物の購入が多いので、結果として一人当たりの購入価格があがっていると感じます。

 

内装・価格設定:市場調査


店の内装にもこだわりがみられます。うどんを注文してトッピングメニューが並んでいるところの上部に黒い瓦を設置しています。壁の色も違っていて、日本ではベニア板などを使っているので茶色ですが、インドネシアではシックな灰色が多く、また間接照明を設置して高級感を出しています。これは、あまり馴染みのないうどんを食べてもらうにはどうすればいいのか考え現地の日本食レストランを調査したところ、価格設定が高いことがわかったためということです。

 

そのため、店内の雰囲気は日本食として高級感が漂うようにして、しかし価格はファストフード並みに設定したということです。こうした工夫により、日本のようにうどんを食べたあとすぐ店をでるのではなく、カフェのようにゆっくり過ごせるようになっていることも、繁盛の理由であることがわかります。

 

また価格を安く設定し、多くの所得層に受け入れられてるようにしています。丸亀製麺の場合工場を必要としないことが強みで、店内に製麺機や大きな釜を置いてうどんをつくっています。工場建設などの初期投資がかからず、お客にとっても、店内製麺で打ち立て出来たての美味しいうどんが食べられるという自家製麺の強みが発揮されています。また、材料はできるだけ現地で調達し、日本から輸入するのはノリ、だしの原料である昆布やサバといった一部の原材料にとどめているため、為替リスクがなく価格を抑えることができています。

 

丸亀製麺の成功から、市場調査を行って店のコンセプトを作り、良いパートナーを選んでその知見を活かし、その国にあわせたメニューや工夫をすることが大切だとわかります。

 

海外進出のための市場調査 – まとめ

 

インドネシアで群を抜いて成功している2つの日系レストランをみてみました。博多一幸舎は、存在しないと思っていたマーケットに的を絞って市場の開拓をした先駆者です。丸亀製麺も、うどんという食べ物をインドネシアに広めたことは同じですが、メニューや価格などに様々な工夫をしています。そしてどちらのケースでも、現地パートナーが大切な役割を果たしています。

 

海外進出をする際には、やはり進出国の生活者とマーケットを熟知するパートナーを選ぶ必要があります。

 

まずは事前調査を行い、進出予定国の情報を集め、マーケットが存在するかどうかを確認し、その後信頼できるパートナーを探し、綿密な市場調査をすることが進出に成功する第一歩となると考えられます。

 

\\\事前調査基礎編はこちらから///
海外進出のための事前調査

【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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