前回の記事では、グローバルマーケットで人材を確保する方法を考えました。
グローバル人材を確保する方法として、今回は人材育成を詳しくみていきましょう。
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海外進出のためのグローバル人材の確保の4つの方法:③グローバルマーケットでの人材確保
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海外進出のためのグローバル人材確保 – 4つの方法
この記事の目次
グローバル人材の育成│グローバル人材に必要な7つの資質
グローバル人材の育成とは、潜在的なグローバル人材つまりその資質を持った人材、またはグローバルリテラシー人材を採用してビジネスリーダー及び経営人材に育成する方法です。時間とコストがかかりますが自社に適したグローバル人材を確保すると言う点では、一番確実な方法でもあります。
グローバル人材に必要な7つの資質
- グローバル英語
- コミュニケーション力
- 異文化を理解する能力
- 柔軟性(適応力)
- 日本人としてのアイデンティティー
- セルフスターター
- 7.幅広い知識と専門性
グローバル人材に必要な7つの資質の中で育成することが難しいものは、元々の資質であるセルフスターターや柔軟性です。一方日本人としてのアイデンティティーは日本の企業で働いている間に身につけるものです。そして、他の資質の英語、コミュニケーション力、異文化を理解する能力、幅広い知識と専門性は育成することが可能です。
グローバル人材の育成│育成ための4つのステップ
ここからは人材育成のために必要な4つのステップをみていきましょう。
1. グローバル人材の育成計画の策定
最初に取り掛かるべきことは育成計画の策定です。
グローバル人材の育成計画は組織戦略の一部をなし、事業計画に合わせて必要とされる人材像を明確にし、必要とされる人材をいつまでに、そしてどのように教育していくかを策定するものです。
育成計画を作るには、目標設定、現状把握、必要なスキルの整理、教育(研修)手段の検討が必要となりますので、この計画が人材育成のためにする最初のステップとなります。
2. 組織全体にグローバル化の必要性や異文化の理解を浸透させる
次にするべきことは、英語教育や一部の選抜社員への教育ではなく、組織全体にグローバル化の必要性や異文化への理解を浸透させることです。全社員にダイバーシティ(多様化)や異文化の理解に関する研修、そして語学研修を実施して、多様性を受け入れる土壌を整えることが大切です。
クローバル化が進んでいることで有名な楽天やソニーなどでこの方法は採用されています。
楽天が2010年から社内公用語を英語にしたことは有名です。
ソニーでは2013年から東京本社で「バディープログラム」を始めています。これは日本人社員と外国人社員がバディーを組み、お互いに母国語を教え合い、多様な文化的バックグランドを理解することが目的です。そして管理職になるには、業務で使える一定の英語でのコミュニケーション力が要件に入っています。
会社全体でダイバーシティを受け入れる土壌を築くことで、社員の意識が変わります。グローバルビジネスが日常となり、社員のグローバル人材育成が特別でなく当然の流れとなり、自然に受け入れられるようになります。
その上で、求める人材要件に適した社員に対してグローバルビジネスに必要なスキルを取得する研修を用意することになります。
3. グローバル人事システムの構築
グローバル人材の育成のためには、グローバル人材に対する人事システムを構築しておく必要があります。
グローバル人材として海外に赴任したものの、概して海外での人事査定が曖昧であるためキャリアパスから外れてしまうことがあります。キャリアマップの中にグローバル人材のキャリアパスを設計し、折り込むことが大切です。
キャリアパスの明確化は、グローバルリーダー候補にとっては自身の目指すキャリア方向性が見えるため、モチベーションが高まり、優秀な人材を引き留めることにもつながります。育成したところで転職されてしまい育成にかけた費用が無駄になるということも避けられます。
キャリアパスの設定では、グローバル事業展開上の主要ポジション、そこに至るまでのキャリアパス上のポジションを特定し、そのポジションを担うための基準・条件を明確にすることが望まれます。
4. グローバル人材育成研修
ここでは一般的に考えられる育成のための研修をご紹介します。
1) グローバルリテラシー教育
グローバル人材の最初のレベルのグローバルリテラシー教育は、通常海外に赴任する人材を育成する研修として位置づけられています。
研修の種類としては、海外研修、グローバルビジネス研修、ビジネススキル研修が考えられます。
- 海外研修:語学学校への留学、海外拠点への短期研修
- グローバルビジネス研修:貿易実務、外国為替、国際会計基準など
- ビジネススキル研修:リーダーシップ、コミュニケーション、マネジメント
そして、3つの要素すべてのための研修として幹部候補生をMBA留学に派遣し、MBA取得後ローカルマネジメントとして海外赴任させるケースを多くみかけます。私が今まで見たケースでは、やはり銀行や商社からMBAに派遣される人が多く、卒業後に海外拠点で活躍しています。技術系の場合、グローバルリーダー候補になるケースが少ないのですが、技術者がグローバルに活躍して行くことは大切ですので、技術者を大学院修士課程留学に派遣することも戦略の一つとなります。
2) グローバルリーダー育成
グローバルリテラシー人材、そしてローカルマネジメント人材のステップアップ研修としては、グローバルビジネスリーダー育成のプログラム、いわゆるグローバル経営幹部養成プログラムがあります。
例えば、以下のような研修が考えられます。
グローバルリーダーシップ:人材マネジメント、リーダーシップ開発
グローバルビジネススキル研修:ネゴシエーション、プレゼンテーション、経営戦略
アクションラーニング:海外拠点の新規事業立案、自社戦略の提言
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海外進出のためのグローバル人材育成まとめ
ビジネスのグローバル化の中、社内からグローバル化の土壌を作ることが大切ですので、自社でのグローバル人材育成は必須になっています。人材育成は自社で研修を行うだけでなく外部での研修が多くなるため、時間もコストもかかります。ビジネスのグローバル化が急速に進む中、自社での育成だけでは間に合わない状態です。そのため、このシリーズで以前ご紹介した、外部からグローバル人材を雇う方法に合わせて、自社での育成を進めていくことが現実的な方法です。
このシリーズでグローバル人材の4つの確保の仕方についてご説明してきましたが、どの方法が一番良いというものではありません。まずは事業計画に合わせた組織戦略があり、そこに合わせた人材育成計画を策定することで、どの方法が自社に合っているか考えていただけたらと思います。
【この記事を書いた人】
濱田幸子
20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。
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