この記事は2020年11月24日に書かれました。
海外進出をする場合に、最初にすることは事前の市場調査です。どのようなポイントを調査すればいいかというと、大まかに「マクロ情報:社会・経済・政治情勢」「市場規模及び消費者」「競合」「パートナー」「法規制」がポイントとなります。事前調査に必要な情報収集のためにコンタクトできる行政機関についてもご紹介します。
事前調査とは?
海外進出の事前調査とは、海外進出をするかどうか判断するために、より正確な事業計画を立てるために情報を収集する調査です。
- マクロ情報
一番最初に調べる情報は、参入対象国のマクロの情報、主に政情・社会情勢及び経済状況です。参入対象国の情勢が、自社の進出目的に合うのか、進出時期として適しているのかなどの情報を収集します - 市場規模
そして、参入したい市場の規模を把握することが大切です。事業の採算をみる事業計画を立てためには、売上やかかるコストを算出する必要があるので、市場規模の予測が大切となります。 - 消費者ニーズの分析
また、消費者の分析をして、ニーズを把握することが大切となります。日本と海外では、文化や環境の違いがありますので、同じ商品やサービスであっても消費者の好みが違います。例えば、東南アジアでは、食べ物ですと、日本より辛いもの、また甘いものを好みます。ためになる実例大塚製薬が「ポカリスエット」をインドネシアで発売した際のニーズ分析はとても良いお手本です。
味を日本よりも甘めにし、スポーツドリンクとしてではなく「First Aid (最初の手当て)」をテーマに、高熱症状を発する感染症のデング熱発症時の脱水症状の緩和、ラマダン(断食月)に断食が開ける直後に水分補給する飲み物として売り出しました。今ではインドネシア国内どこでも見かける飲料水となっています。 - 競合相手の分析
その市場にどのような競合相手がいるのかを調べる必要があります。競合企業の商品・サービスの内容だけでなく、シェア、わかればその売上高、組織、経営戦略や、仕入れ先、流通経路、販売チャネルなどを分析することにより、自社の計画や戦略に役立てることができます。 - パートナーを見つける
海外進出の際に、合弁会社のパートナーとしてだけでなく、仕入れ先や取引先、物流を任せられる提携の企業を見つけることも重要です。商習慣が違う海外で、自社が足りない部分を補完してくれるパートナーが見つけられることができれば、進出の障壁を減らしてくれます。 - 法規制、商慣習の分析
そして、海外の法律や規制及び商慣習について調査することはとても大切です。外資規制だけでなく、輸出入規制、税法、最低賃金などの労務に関する法律、会社法(または商法)など色々な法規則があります。輸入制限によって、原材料の輸入のできない製品がありますので根本的な計画が変わることもあります。法規制の知識を持つことにより、現実的な事業計画が建てられることになるのです。更に、どのように投資資金を回収することが可能かについても調べる必要があります。
事前調査の方法
では、どのように事前の調査を行えばよいでしょうか。
基礎的なことから見ていきましょう。
まず最初にコンタクトするのはJETRO等の行政機関です。
海外ビジネスを支援している行政機関は様々な情報を持っていますので、最初にコンタクトするをすることをお勧めします。
- 日本貿易振興機構(JETRO)
全世界に70カ所を超える海外事務所を持ち、中堅及び中小企業等への幅広い海外展開支援活動を行っている行政機関です。無料で利用できるサービスも多くあります。また、ジェトロでは「海外ビジネス環境調査」というサービスを提供しています。このサービスはすでに全世界に進出している企業に現地のビジネスの状況をアンケート形式で答えてもらい、その結果を掲載するものですので、その国の現状がわかります。 - 独立行政法人中小企業基盤整備機構/中小機構
全国9ヶ所に相談窓口があり、海外投資、輸出入や海外企業との業務提携など海外展開に関する課題に対して、海外ビジネスの専門家が直接無料でアドバイスするサービスがあります。また、海外展開を希望する中小企業者を対象にビジネスマッチングサイト「J-GoodTech」を活用し、海外企業への情報発信及び中小機構の専門家を活用した海外現地派遣支援(現地調査支援・マッチング支援)を実施しています。 - 中小企業庁
海外展開を目指す中小企業・小規模事業者向けに支援施策や制度情報等を提供する「経営サポート海外展開支援」があります。 - 中小企業国際化支援ナビゲーター
中小企業国際化支援ナビゲーターは、日本商工会議所が海外ビジネス展開企業に向けて運営しているサイトで、世界中にある日本商工会議所からのリアルタイムの情報を得ることができます。 - 各国にある日本商工会議所
現地の最新の情報は、各国の日本商工会議所のサイトから収集できます。
行政機関から基礎情報を収集した後、次の段階で自社に特化した情報収集をしたい場合は、民間のコンサルタントを活用することができます。そして、このような国内での調査の後には、実際に現地に赴き、現地で活動している会社や現地のコンサルタントまた現地パートナー候補にコンタクトをして、生の情報を仕入れ、事業計画を具体化していくこととなります。
【この記事を書いた人】
濱田幸子
20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。
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