【事例とポイントまとめ①】海外進出のパートナー選び(ホンダ・ヤマハ・ホカベン等)

この記事は2021年1月6日に書かれました。

これまでの記事で、より効率よく海外展開を目指すためには、信頼のおけるパートナーとの提携が大切という話をしてきました。商習慣が違う海外で、自社が足りない部分を補完してくれるパートナーが見つけられることができれば、進出の障壁を減らしてくれます。

パートナーの範囲は広く、合弁会社のパートナーとしてだけでなく、仕入れ先、販売代理店、物流会社、広告会社などのビジネスパートナー、そしてフランチャイズ先も含みます。

しかし、パートナー選びは簡単ではありません。海外進出のパートナーの事例をいくつかご紹介し、どのような点に留意してみつけることがよいか考えてみたいと思います。

事例1:合弁か独資か(ホンダとヤマハの事例)


まずは合弁パートナーのメリットとデメリットの両方がわかるケースとして、インドネシアの二輪製造会社のホンダとヤマハ発動機の例をあげてみます。

インドネシアではホンダとヤマハ発動機が二輪の2大プレイヤーです。インドネシアの二輪市場は、「日本企業に作り込まれた市場」と呼ばれる消費者が品質重視、サービス重視という性向があり、日本の二輪メーカーの寡占体制となっています。

ホンダはアストラグループと組み、ヤマハは現在独資です。ホンダの組んだアストラグループは、リーマンショックから始まった経済危機の際に、英国資本のジャーディングループ(旧:東インド会社)に買収されていますが、インドネシア有数のコングロマリットです。このグループは、インドネシアの国内自動車生産、販売台数は最大で、四輪はトヨタ、ダイハツ、いすゞ、BMW、プジョーと組み、二輪はホンダと組んでいて、業界の最大手としか手を組まないと言われている優れた販売網をもつグループです。ヤマハ発動機は1974年当時は合弁会社として活動を始めましたが、同じ経済危機の際に、合弁先グループの会社が危機に陥り、ローカルパートナーを失っています。一方でホンダは、アストラグループの販売網を生かし、直実にセールスを伸ばし市場半分以上を常に占めてきました。その中、ヤマハは伸び悩み、かつては「ホンダさんに比べて、うちはいいパートナーに廻りあえなかったから。」と取締役の方が話していました。しかし、2009年になるとAT式のバイクの販売を始め新しい顧客を獲得し、ヤマハは初めてホンダから首位を奪回しました。その一方で、ホンダは、アストラとの合弁比率は50:50で、合弁相手の関連会社がメインディーラーであるため、利益分配の意図が違っていたり、新モデル投入などに対して新しい技術のノウハウの流出があることに対する懸念などもありました。そのため、この際には、独資の身軽さの良さからヤマハに軍配が上がったのです。

現在は、首位はやはりホンダを維持していますが、ヤマハも続いていて、2社で9割のシェアをしめています。よって、ホンダは合弁として、ヤマハは独資として、大成功しているのです。

ヤマハ発動機がその身軽さで成功した理由は、この会社は1974年に設立されていますので、すでに様々なローカル知識やノーハウ、スタッフの確保、そして調達先や販売網の確保などもできていたために、ここまで成功したと考えられます。

この例からは、独資であると、大会社であっても成功には時間がかかることもわかりますので、最初の海外進出にはやはりパートナーが大切という良い例とも考えられます。

事例2:フランチャイズ、ライセンス契約でおこるトラブル(ヒルトンとホカベン)


インドネシアで多くみたケースは、フランチャイズ契約及びライセンス契約のケースのトラブルです。

ヒルトンホテルのケースは有名です。ジャカルタの中心部とバリ島に、ヒルトンホテルが長年ありましたが、10年以上にわたってすでに米国ヒルトングループに、ロイヤリティを支払っていなかったため、ヒルトンの予約ネットワークから消されていましたが、やっと2013年にThe Sultan Hotel という名前に改称し、ヒルトンは現在Double Tree by HIlton Jakartaとしてほかの場所で展開しています。

他にも、レストランやベーカリーなどで、最初の数年は外国のフランチャイズ元のブランド名で活動し、ノーハウを学んだ1-2年後、契約を破棄し、改名だけして、商品はそのまま継続するケースを多くみてきました。 

そしてほかほか弁当の例があります。インドネシアでは弁当形のイートインのファストフードレストランのHOKA HOKA BENTOがあり、誰しもが日本のチェーン店であると信じていますが、実はフランチャイズ契約を結ぶ話をしていたのですが、もの別れたとなり、出店した1985年当初からインドネシアの独資でした。そのままインドネシアでは成長し続け、2013年にやっとHokBenに改名しました。ロゴは日本で以前使われていたものととてもよく似ている男の子と女の子です。 

このように、ブランド名とノーハウをそのまま対価を払わずに使い続けているケースはよくあります。しかし、この問題は、ロイヤリティの支払いだけでなく、ブランドイメージが傷つくこともあります。この面から、パートナー選びの際に、パートナーの信頼性が大切なポイントとなることがわかります。

次の記事では、パートナー選びのポイントを考えていきます。


【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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