海外進出成功のポイント:移転価格とは?税務問題にならない為の考え方

移転価格という言葉を聞いたことがありますか? 移転価格は海外の関連会社間の取引で適用される価格です。この価格設定によって国をまたぐ利益の移転が起き、各国で支払う税金が大きく変わります。

経済活動のグローバル化に伴って、国際取引が増加する中、各国の税収に大きく関わるようになり、税収確保のために各国の税務調査で適正な取引価格へ調整が入るようになりました。2010年になるとアジアの各国でも次々と移転価格税制が導入されました。

以前のように、海外子会社はコストセンターで利益は最小限にするという考え方はもう通じません。あくまでもどの会社も独立した会社であり、適切な利益を生むべきという考え方となっています。

移転価格をしっかりと設定しなければ、進出国でも日本でも税務問題になってしまいます。海外進出の成功の鍵として、移転価格を考えることは、投資の回収に不可欠となっているのです。

移転価格税制とは?


移転価格税制では、企業グループ間で取引を行う場合の価格は、その同じ取引を資本関係がない第三者が行った場合の価格と同じになるべきという考え方を基本としています。 これを独立企業間価格といいます。

例えば、海外子会社の工場のB社で製造された製品を本社のAへ販売する際に、第3者C社への売値より安く設定したとします。結果として、B社の利益は通常取引より少なくなりますので、利益がB社からA社に移転したこととなります。

例えば、
B—>Aは1000円、B —> Cは1500円とすると、

Bはこの取引で500円利益が減り、Aは通常より500円利益が増えたことになります。

移転価格税制は、このように海外の関連会社間の取引を通じた所得の海外移転を防ぐために、海外の関連会社との取引が通常の取引価格である独立企業間価格で行われたものとみなして所得を再計算して、課税する制度です。 

つまり、上の例でいきますと、B社は500円売上が増加する計算がなされます。

移転価格調査において、日本の税務当局は、日本の利益に対して外国の利益が不相当に高くないかというところに注目するのと、同様に海外の税務署は、外国の利益が不当に、日本より低くなっていないかということに注目します。

日本では移転価格はアメリカとの取引で1980年代から調査が始まり、2000年代にはいると移転価格課税が増加しています。その中でホンダのブラジル子会社との部品取引の対価に対して75億円の追徴金がかえられ、後にホンダが勝訴したことで有名です。


\\ホンダの移転価格訴訟について詳しくは以下の記事をご覧ください//
【事例から学ぶ】移転価格税制におけるホンダ訴訟

移転価格の対象取引


関連会社間の取引とは何が対象となるのでしょうか? 

基本は、無形・有形資産の取引、役務提供取引です。

つまり、資産及びサービスの売買価格、無形資産に対するロイヤルティ取引が主な対象です。

移転価格の問題点


各国が其々の立場で移転価格の調査を行い、移転価格調整をし、査定をすると二重課税がおきます。つまり2国間での「税金の取り合い」ということなってしまいます。

上の例でいいますと、B社が500円売上が増え、税金を増額分はらいますが、A社500円コストが減ったため、利益が500円増えいて、税金を既に払っています。つまり、同じ取引に二重に税金を払うこととなるのです。

移転価格の評価は、絶対的なものではなく、あくまでも見解の違い、主観に左右されやすく、今回の例は少額ですが、実際には追徴額は大変大きくなる傾向があり、会社の存続にも関わる問題になりかねません。

二重課税は、納税者は租税条約を使って解消する手続きはとることができますが、時間がかかりますし、お金もかかりますので、先駆けて二重課税にならないような対策を考える必要があります。

インドネシアでは、2010年に多くの日系の車関係の会社に移転価格査定が入りました。当時まだ移転価格税制がインドネシアでは整備されていない中、ロイヤルティの全面否認が多くされました。日本の会社の研究開発コストなどの技術ノウハウに対する対価が否認されたのです。その追徴額は巨額で、子会社で払える額ではなく、日本大使館も入り、インドネシア政府と話し合いが行われた結果、インドネシアでも移転価格税制が整い、移転価格の調査は型が整っていきました。当時の税務署当局は子会社が払えなければ、親会社が払えばよいという姿勢で、査定を受けた会社は税務裁判まで進み、問題が実際に解決したのは2018年に入ってからです。

移転価格のリスク管理


二重課税とならないようにグループ間取引をする対策は、しっかりとした移転価格ポリシーを決めることです。移転価格ポリシーは、国外関連者との間の価格設定をどのように決めるかという方針のことです。

どのように移転価格ポリシーをきめればいいのかについては、次号で説明します。


【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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