【成功のための基礎の基礎】②海外進出のデメリット(課題)に取り組む-前編

この記事は2020年12月19日に書かれました。

海外進出の成功への鍵は、進出のメリットをよりうまく活用し、デメリットをどのようにコントロールしていくかを考えて計画を立てることです。今回は、デメリット(課題)にどう取り組むか、前回あげたデメリットの順にみていきたいと思います。

→海外進出のメリット・デメリットまとめはこちらをご覧ください。

1)為替レートの変動


発展途上国には政治・経済の変化による急激な為替変動のリスクがあります。残念ながら、このリスクを予測することは難しいため、対策としては為替レートの変動を最小限に抑える計画をたてることが大切です。

為替リスクは、原材料および製品の輸入、製品の輸出の両方にあり、対策はリスクを分散することです。例を3つあげます。

  1. 原材料の輸入の比率を減らす。
  2. 製品を国外に輸出するだけでなく、国内市場も開拓する。
  3. 販売会社の場合、日本からの製品だけでなく、現地生産したものを販売する。

原材料や製品の為替変動によるコスト上昇は、そのまま製品の販売価格に転嫁することができませんので、リスクを分散することが一番の対策なのです。

2)政治リスク


発展途上国の政治情勢のリスクについては、これもまた予測することは難しいのですが、情報を常に収集でき緊急の対策が取れるような体制作りが必要です。

「チャイナプラス」という言葉を聞かれたことがあると思います。かつては、その豊富な労働力と安価な人件費から「世界の工場」としてたくさんの外資企業が進出していた中国ですが、海外拠点を中国へ集中させることによるリスクを回避するため、もう1つの国に工場を作る動きのことです。こちらも政情リスクを分散するという面で効果的な方法です。

3)  言語や文化、商習慣の違い


言語、文化、慣習が違うことによって起きるトラブルは、進出の際ではなく、進出後のマネジメントの大きな課題です。

■人材の確保、育成、労務管理

文化、言語、慣習が違う国の従業員の雇用は容易ではありませんが、その国の伝統・宗教・文化・価値観などを理解するように努めて、コミュニケーションをとることが大切です。どのような点を気をつければよいのでしょう。

1.言語を勉強する。

言語を学ぶことは大変です。しかし、少しでも現地の言葉を学ぶことによって、その国への敬意を示している姿勢が相手にも伝わり、現地の人との関係はよくなります。

しかし、外国語でビジネスができるようになるまで、その言語を学ぶことは大変ですので、専門の通訳の方を使っているケースが多くあります。通訳の方の質がいい場合はうまくいきますが、効率を考えると日常的に専門通訳者を雇用することはあまり良い選択肢とはなりません。またアジアの国によっては、ある程度の教育を受けた人材は英語が話せる国もありますので、その場合は、ビジネスには現地語に代わり英語を使用することも可能です。例えば、フィリピン、インドネシア、マレーシアでは英語が通用します。

逆に日本語が話せるスタッフを雇っている場合、日本語が話せるということに重きを置きすぎ、その人の能力以上または専門分野以外の役で雇用し、問題が起きるケースも多くみました。この面でも、日本人の担当者が少しでも現地の言葉を勉強することは大切だと言えます。

お手本になる事例
味の素は、調味料という家庭的に使う少額の製品を扱っていますので、地元に馴染むことが大切であるという信念を持っています。そのため、インドネシアの社内ミーティングはすべてインドネシア語で行っています。

2.人材の確保と育成方法が日本とは異なることを理解する。

もともと海外の労働市場は、日本に比べると人材の定着率が高くないと言えます。日本では新卒の場合(特に文系の場合)、大学の専攻をあまり考慮せずジェネラリストを雇い、色々な部署に配属して育成します。一方日本以外では担当の仕事の守備範囲は狭く、いろいろな部署を経験させて一から育成するという考え方は殆どありません。 

例えば経理のスタッフですが、経理の知識のないスタッフを雇ってしまい、育てることもできず、経理がうまく回っていない会社を多くみました。学歴を精査し、知識のあるスタッフを雇う必要があるのです。また、あるクライアントのスタッフが退職した後、他のクライアントの新しいマネージャーとしてベースアップして雇われているケースも多くみました。その場合、実際の経験・能力以上のポジションとなっていることも多々ありました。

人件費が安いことを狙っての進出ではあるのですが、管理の要のポジションには、少し給与が高めでもしっかりした履歴のあるスタッフを雇うことが必要です。

こちらも併せてご覧ください

続きは、デメリット(課題)への取り組み後編をお読みください。後編では、労務管理の難しさ、商談や知名度の確立の難しさ、法制度や規則の複雑さ及び不明瞭さへの取り組みを説明します。


【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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