【成功のための基礎の基礎】③海外進出のデメリット(課題)に取り組む-後編

この記事は2020年12月19日に書かれました。

前回に続いて、海外進出のデメリット(課題)にどう取り組むか、考えていきましょう。

→前編はこちらからご覧いただけます。

3) 言語や文化、商習慣の違い


■人材の確保、育成、労務管理

労務管理での文化面の理解は不可欠

労務管理において、その国の文化を理解することは大切です。文化の理解が足りず、日本のやり方を通すことによって、労務問題が起き、撤退した会社もあります。

インドネシアでは、SONYのケースが有名ですので紹介します。SONYの工場では、もともと従業員は座って作業をしていましたが、作業の効率化をはかり、日本と同じく立って作業をするため、椅子を取り払ったことから、大規模なストライキが起こりました。その上外部の労働組合などの煽りもあり、収拾がつかなくなり結局撤退を余儀なくされました。一般的にインドネシアでは既得権の考え方が強く、従来より権利が減ると感じる場合は大きな抵抗があり、このような新しい方法への適応ができなかったため起きてしまったことです。変更する前に、しっかりと労働組合と話し合う必要があったのです。

特に工場などで多くの従業員を雇用する場合、労務関係について外国人が担当することが難しいため、有能なローカルのマネジメントが必要です。

■商談や知名度の確立の難しさ

商習慣を理解していなければ、商談はうまくまとまりません。会社や製品の知名度を高めるには、その国の文化や価値観を理解し、顧客のニーズにあったマーケティングを展開する必要があります。

最近は、どの国でもSNSによるマーケティングが大切になってきていますが、特にインドネシアでは、2020年1月時点でのインドネシアの人口は2億7200万人のうちおよそ60%、約1億6000万人のインドネシア人がアクティブSNSユーザー数という統計がでています*。そのため、SNSによるマーケティングは必須で、店やイベントなどのオープンには、インフルエンサーを呼んだり、Twitter担当を各販売会社でも効果的に使って売り上げをあげるという方法がとられています。このように知名度を確立するには、その国の事情にあったマーケティングの方法を見つけることが大切です。

 

しかし、文化や商慣習を理解するには時間がかかり、最初の海外進出時に独力で十分な知識を取得することは難しいのが現実です。よって、このような海外進出の障壁を減らすには、足りない部分を補完してくれる良いローカルパートナーをみつけることが大切です。

パートナーの形には、色々あります。仕入れ先、販売代理店、物流会社、広告会社などのビジネスパートナー、そしてもちろんフランチャイズ先、合弁のパートナーなどです。もちろん設立にあたっては、よい会計事務所、弁護士事務所、コンサルティング会社をみつけることも、1つのビジネスパートナーの形です。

*参照元: https://datareportal.com/reports/digital-2020-indonesia

4)  法制度や規則の複雑さ、不明瞭さ


発展途上国では法制度がよく変更となり、急に部品や製品を輸入できなくなったり、急に新しい税規則がでたりと、色々と驚かされることがあります。まずは正確な情報が早く入ってくるように、そして速やかに柔軟に対応できるように体制をつくる必要があります。

対策として、まずは社内に有能な人材を雇うことが考えられます。ローカルのネットワークをもつ人材です。ビジネスパートナーとして法律事務所、弁護士、会計事務所、コンサルタントなどから情報を得ることもできますが、その情報をしっかりと理解できる社内人材も必要です。この面で合弁会社の場合、合弁から来た取締役やマネージャーはローカルのコネクションをもっていることが多くあります。

そして、得た情報に対して対処できる体制が必要です。通常、大きな対策が必要な場合は日本の本社に情報が共有され、対策を決定することとなります。この際、日本の本社でもその国に理解のある人が受け口となることが理想です。その国の文化や習慣を知らない場合は、間違えた対策を選んでしまうこともありうるからです。

インドネシアでは法令がよく変わるため、法令が出てすぐに対応するとまた法律が変わって損をするということがよくあります。

 

ここでも一例を見てみましょう。

インドネシアで2011年6月28日に発布・即時施行された「通貨法(UU No.7/2011)」では、国内でのルピアの使用が義務化されました。それまで多くの商取引がUSDで行われていたため、多くの会社が契約を変更したりと対応に追われました。その一方で反発も多く、しばらくすると結局使用義務は、「現金取引」のみに限定されたのです。よって、急いで契約を変更した会社は損してしまう結果となりました。しかし、2015年3月31日付けのインドネシア中央銀行の通達「17/3/PBI/2015」で、2015 年 7 月1日から全ての国内決済におけるルピアの使用が義務化されました。このように一度発布されて施行できなかった規則が、数年経ってから施行されるケースもあります。

 

■まとめ

二回に渡って、海外進出に伴うデメリットへの対策について考えてきました。海外進出を検討する際には、このデメリットの影響を最低限にするように取り組んでいくことが海外進出の成功への鍵と言えます。


【この記事を書いた人】

濱田幸子

 20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。

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