この記事は2020年11月9日に書かれました。
海外に進出をする際に決める必要がある大切な事項は、進出形態です。初期投資の負担やビジネスリスクを分散する場合、または外資規制によって業種によって進出形態がきめられている場合は、ビジネスパートナーを探す必要があります。(外資規制は各国によって違っています。)
7つの進出形態
進出形態は主に以下の7つが考えられ、下に行くほど投資負担が増える進出形態となります。
- フランチャイズ契約:
ローカル企業と契約を結び、ロイヤリティを受け取ることでローカル企業が商標の使用権や商品及びサービスの販売権を使用して活動する方法 - 販売代理店:
現地の販売代理店を通じて製品を販売する方法 - 生産委託:
現地の協力工場へ製品加工を委託する方法 - 駐在員事務所:
現地の情報収集を主な任務として、通常営業活動はできず、契約の署名や売上をあげることはできません。 - 支店:
営業・製造活動は限定して認められます。 - 合弁現地法人:
パートナーと共同で出資して、現地法人を設立する方法 - 100%子会社の現地法人:
単独の100%出資で、現地法人を設立する方法
単独で進出することは、独自で全てを決めることができますが、投資も大きくなりますし、またリスクも増えます。
一方で、パートナーを選んで投資する場合は、初期投資を減らし、ビジネスリスクを分担することができます。
現地パートナーを持つメリット・デメリット
メリット:
- 自社が不足している機能、特に、ローカルパートナーの強い現地販売網、流通網の構築、政府機関との折衝及び情報の獲得などを補完されます。
- 資本投資を少なく抑えることができ、ビジネスリスクも分担できます。
デメリット:
- 事業から得られるリターンをパートナーと分けることになります。
- パートナーの意向を取り入れる必要があるため、自分の事業計画通りに行うことができません。
- 自社の技術やノウハウがパートナー方に流出する可能性があります。
単独で進出しない場合は、より効率良く海外展開を目指すため、パートナー選びは大切です。信頼のおけるパートナーとの提携が、海外進出の成功をきめる鍵となりますので、ビジネスパートナーの選定は慎重に行ってください。合弁を組む場合は、自社のメリットや利益だけでなく、相手側の合弁の狙いを見極めることも大切です。また、出資比率の決定も大切なポイントとなります。
インドネシアの例
前回はセールス会社の外資規制について書きましたので、今回は製造業の例をあげます。
もともとインドネシアでは外資規制で、製造会社も合弁会社として設立されていました。その後1994年のネガティブリスト改訂で、100%の製造会社の設立が認められましたので、それ以降は独自資本の会社も合弁会社も設立されました。
合弁会社の場合、日系企業とインドネシアの企業の役割は明確に分かれています。日系企業は製造、インドネシア企業は政府及び税務署との折衝、地域住民との関わり、労働組合との交渉、販売、経理の担当です。近年になると政府及び税務署との折衝、地域住民との関わりはあまり必要ではなくなったため、ローカルパートナーは労働組合との交渉、及び販売と経理のみが担当となりました。そのため、会社によってはローカルパートナーの貢献が少ないと感じる会社も多くなり、合弁の解消、またはセールス会社を切り離したりする再編も行われました。
しかし、独資で新規に会社を設立した場合、なかなか経理能力に優れたスタッフを雇用できるケースが少なく、記帳代行を使っている会社も多くあリましたし、また企業管理に戸惑っている会社も多く見かけ、良いパートナーを選んだ場合は、しっかりとした経理スタッフや様々なシステムが整っている会社が多いのを見てきました。
また一方で、パートナーから送られてきた会計担当のスタッフが日系企業のいうことを聞いてくれないなどの悩みのある企業もあリましたので、メリット、デメリット、そして外資規制を検討した上で、合弁会社を設立する場合は、慎重に信頼のあるパートナーを選ぶことが投資を成功させるポイントとなります。パートナー探しのポイントについては、別の記事で説明したいと思います。
【この記事を書いた人】
濱田幸子
20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。
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